カスタマーハラスメントを知る
※以下については、R6.10.28カスタマーハラスメント防止ガイドライン等検討会議(第2回)におけるカスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)(検討会議案)に基づいています。
カスタマーハラスメント(カスハラ)について
東京都の条例では、「何人も、あらゆる場において、カスタマーハラスメントを行ってはならない」と定められています。東京都に暮らし、また働く人々は、カスタマーハラスメントのない、よりよい社会をつくる一員として行動することを心がけましょう。
カスタマーハラスメントとは?
- 顧客等から就業者に対する、著しい迷惑行為であり、就業環境を害するものです。
- 著しい迷惑行為、暴行、脅迫その他の違法な行為又は正当な理由がない過度な要求、暴言などの不当な行為も含まれます。
カスタマーハラスメントの代表的な行為の類型
ただし、就業者の業務内容によって顧客等との接し方が異なること、実際に発生した個別事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ること、行為類型は限定列挙ではないことなどに十分留意する必要があります。
- 全く欠陥がない商品を新しい商品に交換するよう就業者に要求すること。
- あらかじめ提示していたサービスが提供されたにも関わらず、再度、同じサービスを提供し直すよう就業者に要求すること。
- 就業者が販売した商品とは全く関係のない私物の故障等について就業者に賠償を要求すること。
- 就業者が販売する商品とは全く関係のない商品を販売するよう要求すること。
- 就業者に物を投げつける、唾を吐くなどの行為を行うこと。
- 就業者を殴打する、足蹴りを行うなどの行為を行うこと。
- 就業者や就業者の親族に危害を加えるような言動を行うこと。
- 就業者を大声で執拗に責め立て、金銭等を要求するなどの行為を行うこと。
- 就業者の人格を否定するような言動を行うこと。
- 多数の人がいる前で就業者の名誉を傷つける言動を行うこと。
- 就業者に声を荒らげる、睨む、話しながら物を叩くなどの言動を行うこと。
- 就業者の話を遮るなど高圧的に自らの要求を主張すること。
- 就業者の話の揚げ足を取って責め立てること。
- 就業者に謝罪の手段として土下座をするよう強要すること。
- 就業者に対して必要以上に長時間にわたって厳しい叱責を繰り返すこと。
- 就業者に対して何度も電話をして自らの要求を繰り返すこと。
- 長時間の居座りや電話等で就業者を拘束すること。
- 就業者から店舗等から退去するように言われたにもかかわらず、正当な理由なく長時間にわたって居座り続けること。
- 就業者を個室等で拘束し、長時間にわたって執拗に自らの要求を繰り返すこと。
- 就業者の人種、職業、性的指向等に関する侮辱的な言動を行うこと。
- 就業者へわいせつな言動や行為を行うこと。
- 就業者へのつきまとい行為を行うこと。
- 就業者の服装や容姿等に関する中傷を行うこと。
- 就業者を名指しした中傷をSNS等において行うこと。
- 就業者の顔や名札等を撮影した画像を本人の許諾なくSNS等で公開すること。
暴行罪(刑法第208条)、傷害罪(刑法第204条)、脅迫罪(刑法第222条)、恐喝罪(刑法第249条)
名誉毀損罪(刑法第230条)、侮辱罪(刑法第231条)、威力業務妨害罪(刑法第234条)
強要罪(刑法第223条)、偽計業務妨害罪(刑法第233条)、監禁罪(刑法第220条)
不退去罪(刑法第130条)、不同意わいせつ罪(刑法第176条)、ストーカー規制法 …等
- 就業者が提供した商品と比較として、社会通念上、著しく高額な商品や入手困難な商品と交換するよう要求すること。
- 就業者が提供した商品・サービスと比較して、社会通念上、著しく高額な金銭による補償を要求すること。
- 就業者に正当な理由なく、上司や事業者の名前で謝罪文を書くよう要求すること。
- 就業者に正当な理由なく、自宅に来て謝罪するよう要求すること。
- 就業者に不可能な行為(法律を変えろ、子どもを泣き止ませろ等)を要求すること。
- 就業者に抽象的な行為(誠意を見せろ、納得させろ等)を要求すること。
消費者の権利と責任
本来、正当なクレームは業務改善や新たな商品又はサービスの開発につながるものであり、不当に制限されてはなりません。また、就業者が応対する顧客等の中には、障害のある人など合理的配慮が必要な人も存在します。
就業者と顧客等が、対等な立場にたって、お互いを尊重することを基本としたうえで、消費者、障がい者、認知症の人などの権利について、十分に配慮しましょう。
消費者
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消費者基本法(昭和43年法律第78号)第5条第1項第4号では、事業者は、その供給する商品及び役務について、消費者との間に生じた苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備等に努め、当該苦情を適切に処理する責務を有する旨を規定しており、同法第2条に規定する消費者の権利の実現や国際消費者機構が提唱する消費者の責務を果たす機会が失われないよう十分に留意する必要がある。 消費者契約法(平成12年法律第61号)第3条第1項では、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が明確なものでかつ消費者にとって平易なものになるよう配慮すること(契約条項の明確化)、同条第2項では、消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供すること(情報提供)が事業者の努力義務として規定されている。
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障害者 |
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第8条第2項では、事業者がその事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をする責務を有する旨を規定しており、障害者の権利の保護に十分に留意する必要がある。
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認知症の人 |
共生社会の実現を推進するための認知症基本法(令和5年法律第65号)に規定する事業者においては、同法第7条により、国及び地方公共団体が実施する認知症施策に協力するとともに、そのサービスを提供するに当たっては、その事業の遂行に支障のない範囲内において、認知症の人に対し必要かつ合理的な配慮をする責務を有しており、認知症の人の権利の保護に十分に留意する必要がある。
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表現の自由等 |
我が国では、全ての国民に対し、日本国憲法第21条により表現の自由が保障されており、その他の日本国憲法で保障される自由と権利の保護に十分に留意する必要がある。
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- 与えられた情報をうのみにするのではなく、商品の価格や品質などの情報に疑問や関心をもつことが大切です。
- 消費者の権利を実現するためには、企業や行政に対して、意見を言うことが大切です。
顧客等の責務
顧客等は、自身の言動がカスタマーハラスメントになり得ること、誰もが行為者になってしまう可能性があることを理解したうえで、就業者に対する言動に必要な注意を払うよう心がけましょう。
- 正当なクレームや意見を伝えるとき、怒りの感情がエスカレートしてカスタマーハラスメントにならないよう、伝え方を工夫したり、冷静に伝えるよう努めることが大切です。
- どのような言動がカスタマーハラスメントになり得るのかについては、カスタマーハラスメントの行為類型をご覧ください。
- カスタマーハラスメントで成立し得る犯罪行為
カスタマーハラスメントは、以下のような犯罪が成立する可能性があります。被害者がカスタマーハラスメントにより、物質的・精神的損害を被った場合には、不法行為に基づく損害賠償請求も可能となります。また、インターネット上の誹謗中傷についても、侮辱罪として認められる可能性があります。
犯罪に該当しうる行為等(例) | 罪名 | 罰条(刑法) | |
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1 | 物を壊す、殺すといった発言による脅し | 脅迫罪 | 222条 |
2 | (名誉毀損的言辞を伴う)大声での恫喝、罵声、暴言の繰り返し | 名誉毀損罪 | 230条 |
3 | (侮辱的な)大声での恫喝、罵声、暴言の繰り返し | 侮辱罪 | 231条 |
4 | (虚偽の風説の流布又は偽計を用いた)SNSの投稿で自治体の信用を毀損させる行為 | 信用毀損罪 | 233条 |
5 | 長時間の電話。度重なる電話。時間の拘束、業務に支障を及ぼす行為 頻繁に来庁し、その度にクレームを行う 複数部署にまたがる複数回のクレーム 大声、暴言で執拗にオペレーターを責める |
偽計業務妨害罪 | 233条 |
6 | 庁舎内で大きな声をあげて秩序を乱す 大声での恫喝、罵声、暴言の繰り返し 脅迫的な言動、反社会的な言動。物を壊す、殺すといった発言による脅し |
威力業務妨害罪 | 234条 |
7 | 言いがかりによる金銭要求(欺罔行為が伴うもの) | 詐欺罪 | 246条 |
8 | 従業員へのわいせつ行為(暴行又は脅迫が伴うもの) | 不同意わいせつ罪 | 176条 |
9 | 事務所(敷地内)への不法侵入 正当な理由のない業務スペースへの立ち入り |
建造物侵入罪 | 130条 |
10 | 一定時間を超える長時間の拘束、居座り | 不退去罪 | 130条 |
就業者の責務
就業者は、カスタマーハラスメントが起こる社会的な背景やどのような行為がカスタマーハラスメントに該当するかなどに関心を持ち、被害を受けた際は誰に相談するか、どのように対応するべきかについても理解を深めましょう。特に現場監督者にあたる就業者は、現場で働く就業者の健康と安全を守る責務があることから十分な理解が求められます。
- 就業者は顧客等と対等な関係であることを理解し、顧客等からのクレームや意見を受ける際の対応方法の工夫など、カスタマーハラスメントを未然に防ぐための伝え方などを学ぶことも大切です。
- 事業者が研修や告知等カスタマーハラスメント防止に向けた取り組みを進める際には、就業者も積極的に参加・協力しましょう。
事業者の責務
事業者は、カスタマーハラスメントの防止に主体的かつ積極的に取り組みましょう。就業者をカスタマーハラスメントから守るとともに、行為者にならないための対策や、その他必要な措置を講じるよう努めましょう。
カスタマーハラスメントに関する調査結果
厚労省「令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査」2024.3
https://www.mhlw.go.jp/content/11910000/001256082.pdf
厚生労働省は、カスタマーハラスメントを含む職場におけるハラスメントについて、令和5年度に調査を行っています。
【企業におけるカスタマーハラスメントの発生状況】
過去3年間の各ハラスメント(パワハラ、セクハラ、妊娠・出産・育児休業等ハラスメント、介護休業等ハラスメント、顧客等からの著しい迷惑行為 ※カスタマーハラスメント、就活等セクハラ)の相談件数について、「顧客等からの著しい迷惑行為」のみ、「件数が増加している」の割合の方が「件数は減少している」より高かった。
また、「医療、福祉」、「宿泊業、飲食サービス業」、「不動産業、物品賃貸業」の順に相談があった企業の割合が多かった(それぞれ 53.9%、46.4%、43.4%)。
【カスタマーハラスメントの具体的な内容】
顧客等からの著しい迷惑行為に該当すると判断した事案があった企業における事案の内容としては、「継続的な(繰り返される)、執拗な(しつこい)言動(頻繁なクレーム、同じ質問を繰り返す等)」(72.1%)が最も高く、「威圧的な言動(大声で責める、反社会的な者とのつながりをほのめかす等)」(52.2%)が続いた。
【カスタマーハラスメントによる損害や被害】
過去3年間に顧客等からの著しい迷惑行為に該当する事案があった企業における損害や被害の内容としては、「通常業務の遂行への悪影響」(63.4%)が最も多く、「労働者の意欲・エンゲージメントの低下」(61.3%)が続いた。