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その第一歩をまずは知ってみませんか?
最近、カスタマーハラスメント(カスハラ)という言葉をよく目にするようになりました。カスタマーハラスメントとは、ごく簡単に言えば顧客からのサービス提供者に対するハラスメントのことです。
以前からモンスターペアレント(保護者)、モンスターペイシェント(患者)等、一部の常軌を逸した顧客への対応に苦慮する業界では、顧客からのハラスメントを問題視していました。
一般的にはモンスタークレーマーとも言われ、そういう特殊な顧客がいるが、それはある意味仕方がないことと半ば諦め、そういう顧客とも付き合っていくしかないと割り切っているところもありました。
その背景にはどこかで「お客様は神様です」という非常に歪んだ価値観がサービス提供者側にも顧客側にもあったのではないかと思われます。
この「お客様は神様です」とは、故三波春夫さんが1960年代に言った言葉であることが知られていますが、現在使われているような意味で発言したのではないことを三波春夫さんの公式WEBサイトでは公式に否定がされています。
カスハラのタイプとしては、長時間の拘束や同じクレームを何度も繰り返す、名誉毀損・侮辱・酷い暴言、著しく不当な要求(金品の要求、土下座の強要等)、脅迫、暴行・障害等が挙げられています。
本文のお読みの方の中にはまさか自分がこのようなことをしているとは思ってもいないでしょう。一方で自分がしていること、してしまったことがもしかしてカスハラに該当するのではないかと思われている方もいるかもしれません。
パワハラが世間認知される過程でも怒るだけでパワハラと捉えられてしまうのではないかと思われる方が増えたように、カスハラが認知されていく中でクレームや意見を言っただけでカスハラ扱いを受けてしまうのではないかと危惧している人もいることでしょう。
言葉「べき」
自分がカスハラの加害者になってしまうかもしれないと少しでも感じた時、注目して欲しい言葉があります。それが「べき」です。
「べき」とは、「サービスはこうあるべき」「お店は対応するべき」「間違ったことをするべきでない」「誤りは正すべき」といったものです。
この「べき」は何かと言えば、自分の理想、希望、要求を表す言葉です。「はず」「当たり前」「普通」「常識」といった言葉にも置き換えることができます。
カスハラをしてしまいがちな人はこれらの言葉をよく使います。「お店はお客の言うことを聞くべきだろ」「説明するのが当たり前だろ」「お前のところは普通じゃない」といった具合です。
もちろん、これらの言葉を使ったらカスハラに即該当するかと言えば、そうではありません。顧客がサービス提供者側に何も言ってはいけないということにもなりません。サービス提供側に落ち度や非があれば、その点を指摘したり是正を要求することは顧客側にとっての権利でもあります。
ただし、その主張方法や実現するための方法が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるものであった場合、カスハラに該当する可能性がとても高くなります。
アンガーマネジメント
怒りたくなった時の
アンガーマネジメント
どうしても怒りたくなった時はアンガーマネジメントの6秒ルールを思い出してください。諸説あるのですが、怒りが生まれてから理性が働くのに6秒程度かかると考えられています。
つまりイラッとしてから6秒以内に何かを言ったり、することは理性が働かない反射的な言動になり、それは多くの場合、取り返しのつかない発言や行動になってしまうでしょう。
6秒待つために深呼吸をしたり、数を数えたりするのが有効的です。勘違いして欲しくないのは、6秒待てば怒りが消えるわけでも、6秒待ったら何でも言っていいわけでもありません。怒りに囚われたまま何かをしないための6秒間です。
もし6秒待ってもどうしても強く怒りたい衝動にみまわれたら、その場から立ち去りましょう。アンガーマネジメントではこれを退却戦略と呼んでいます。
日本人はその場から離れることを逃げること、負けることと良くないことのように思いがちですが、その場から離れることはアンガーマネジメント的には推奨されていることなのです。
サービスを提供する側も受ける側もお互いに人です。家に帰れば家族があり日常があり、そして人生があります。それを忘れてしまうと、お互いに何をいくら言ってもよい相手になり下がってしまいます。
カスハラをする人は少なからず怒りの感情を持っています。怒りの感情で知っておいて欲しいことは、怒りは連鎖することです。
ある人が誰かに投げた怒りは社会を巡り巡って自分に返ってくることが往々にしてあります。
例えば、お店でカスハラをした人をAさんとします。カスハラを受けた店員さんは家にその怒りを持ち帰り家族に当たります。当てられた家族は社会に出て行き誰かにその怒りをぶつけます。その怒りをぶつけられたBさんが実はAさんとつながっていて、どこかでAさんにその怒りをぶつけてくるかもしれないのです。
ここに挙げたことは極端な例で、そんなことなんてそうは起きないと思われるかもしれません。
人は六次の隔たりでつながっていると言われています。全ての人や物事は6ステップ以内で全てつながっているというものです。世間が想像以上に狭いことはこれまでの人生の中で繰り返し経験してきたと思います。
20年以上前、ペイ・フォワードという映画が大ヒットしました。他人から受けた厚意をその人本人に対してではなく、別の人に厚意を贈ることで社会が変わっていくという素話でした。
誰も自分に怒り、敵意が向いて欲しいとは思っていません。あなたが向けて欲しくないと思っているのと同じくらい相手もそう思っています。
相手に対して向けるのは常に厚意でありたいものです。「情は人のために為らず」と日本でも昔から言われています。
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会 ファウンダー