企業の取組事例
社会の動きに合わせたカスハラ対策の推進で、いきいきと働くことのできる職場環境の整備を図る
コロナ禍後、お客様応対に苦慮している現場の声を頻繁に聞くようになり、実態を把握したところ、暴言や暴行など、会社として看過できない事象が発生していました。ANAでは中期経営戦略、中期人財戦略の中で「社員が働いて幸せと思える会社」というビジョンが掲げられますが、社員がいきいきと働くことのできる環境を作りたいと思ったことがカスタマーハラスメント防止対策の取り組みを始めたきっかけでした。具体的には、以下の3つの取り組みを実施しています。
・カスタマーハラスメントの実態把握と必要な対策の検討・実施
・社内ガイドラインの整備とそれに基づいた全社員教育の展開
・カスタマーハラスメントに対する基本方針の開示
まず、実態把握のため2023年度の社内報告件数と事象をまとめました。その後、発生しうるカスハラ行動様態を、厚労省のマニュアルに基づき「航空業界におけるカスタマーハラスメント行為例(9つの行為例)」として設定しました。
①暴言、大声、侮辱、差別発言、誹謗中傷等
②脅威を感じさせる言動
③過度な要求
④暴行、器物損壊、その他の粗暴な言動等
⑤業務に支障を及ぼす行為(長時間拘束、複数回のクレーム等)
⑥業務スペースの立ち入り
⑦社員を欺く行為
⑧会社・社員の信用を棄損させる行為
⑨盗撮、つきまとい、わいせつな行為、卑猥な言動、セクシャルハラスメント
上記の具体的な行為例と対応方法、基本の対応などを記載した社内ガイドラインを整備し、それに基づいた全社員教育を展開しました。また、分類ごと各部門ごとに報告できるよう、社内レポートシステムを整理しています。
さらに、JALグループ・ANAグループ合同でカスタマーハラスメントに対する基本方針の対外リリースを行い、両者の想いや策定に至った背景、企業姿勢を社会へ発信しました。リリース後は、新聞・テレビ・ネット等各社にて報道され、社会やお客様の反応は総じてポジティブでした。(取材:CX推進室CS推進部)
社内での具体的な取り組みの一つとして、お客様対応の主管部署であるCS推進部に、フロントライン(客室、空港、コールセンターなど、直接お客様対応を行う現場)がカスタマーハラスメント対応を行う上での相談窓口を設置し、対応方針を相互に確認しながら現場対応をバックアップしています。また、カスタマーハラスメント防止対策を社内で浸透させるために、以下の取り組みを実施しています。
・トップメッセージの発信
・フロントラインの実態に則したガイドラインの策定
・セルフラーニングや実践型セミナーの充実
・フロントライン部門とカスハラ主管部門との意見交換・定例会議の実施
施策実施前は、カスタマーハラスメントに該当する行為があっても明確な後ろ盾なく毅然とした対応がなかなかできず対応に苦慮していましたが、会社としての対応方針を策定したことで、ばらつきのない一貫性のある組織的な対応を行う体制が定着しつつあります。会社のスタンスが明確となり指針ができたことで、「後ろ盾ができた」、「⼤変⼼強い」という反響がありました。また、カスハラに該当する事象が発生したときには、しっかりと報告するという意識の高まりを感じています。
カスタマーハラスメントは従業員の精神的負担も大きく、就業環境が悪化することでサービス品質を維持することが困難になる、という状況もありました。カスハラ対策の推進により現場の対応力を高めることで、お叱りを含むお客様のご意見やご要望にもしっかりと向き合うことができ、結果的には、サービス品質やお客様体験価値の向上につながると考えています。
- ■会社名
- 全日本空輸株式会社
- ■本社所在地
- 東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター
- ■従業員数
- 12,854名(2024年3月31日現在)
- ■事業内容
- ・定期航空運送事業
・不定期航空運送事業
・航空機使用事業
・その他附帯事業 - ■ホームページ
- https://www.ana.co.jp/group/company/ana/